遠州灘 カモメの水兵さん

カテゴリー │舞阪港しらす漁 冨士丸



風はもう薫るような五月の風、日曜日の南浜名湖弁天島、舞阪は
海を楽しむお客さまで賑わいました。

南浜名湖の町は海の遊びの素材を持つ町、歩くだけで海を感ずる
ことができます。そこにいるだけで楽しめる町です、

今日はしらす漁船「冨士丸」の堀江船長にお願いして青い遠州灘
の漁に同行させていただき、美しい海の行く舞阪の勢いを学んで
きました。

美しい海に網を曳く船にカモメが群れてきます。
鳥たちも漁船と共に魚を追う「トリヤマ」です。

舞阪港の建物の屋根は「ゆりかもめ」の羽を模してデザインされた
と聞いていますが、まさに美しい海の鳥たちの乱舞でした。

カモメは舞うだけでなく海に降りて船と共に浮かびます。
童謡「カモメの水兵さん」で歌われるように、「波にチャプチャプ浮か
んでる」のです。



曳いた網にもう一つ、翼あるものがかかりました。
「ホウボウ」です。

舞阪港に揚がるこの美しい魚は大きな羽を持っています。
美しいカモメの羽に負けない海の色をした大きな羽を広げるこの季
節の魚です。

港の新鮮な魚をさらに獲れたてのその羽を見ることができました。

風はもう五月の風、美しい海に棲む美しい羽たちを見ることができ
ました。

しらす漁を書くにあたり、まずは堀江船長、漁師のみなさんのご厚
意と、この機会を作っていただいた漁徳丸のエージ船長に感謝いた
します。

※取材協力:冨士丸・漁徳丸



 

早朝5時 舞阪港しらす漁 冨士丸出港

カテゴリー │舞阪港しらす漁 冨士丸



舞阪港を母港に、遠州灘広く漁をするしらす漁の船は「シロコ船
(しろこぶね)」、、その漁はシロコ漁と呼ばれています。
二艘で網を曳く二艘曳きの船団は五十統が活躍しています。

「統」とは組という意味、網船(あみぶね)綱船(つなぶね)のひと
組を統(とう)と呼びますから、舞阪の100艘の船がしらすを追って
います。

舞阪港4:48分、乗船を許可いただいた冨士丸は5:00時に出港
の予定、舞阪港の浜名漁協製氷所に近い着け場に向います。
※写真は冨士丸ではありません。



昨年の五月に今切を出漁するシロコ船船団の勇壮な姿を見てか
ら、いつかはこの「暁の船団」に乗せていただこうという夢を、冨
士丸の堀江利明船長に叶えていただきました。

船は正面が網船(あみぶね)の第三冨士丸、その左が綱船(つな
ぶね)の第一冨士丸です。

シロコ船は船尾の巻車(まきしゃ)に長い網を巻いた10トン級の船、
舞阪の賑わいはシロコ船の漁にかかっています。



早朝5時、舞阪港を出港します。
外海の遠州灘とは違い、今切の内側にいる限りおだやかな海から
いよいよ海に向うのです。

800馬力ものディーゼルエンジンが足下から響きます。
まだ暗い海を航海灯を灯して冨士丸は行くのです。

冨士丸のシロコ漁の様子を連載してまいります。

※取材協力:冨士丸



 

今切を行く暁の船団 シロコ漁

カテゴリー │舞阪港しらす漁 冨士丸



南浜名湖弁天島から臨む今切は、浜名湖が海に注ぎ、豊かな
海が浜名湖を潤すところ、海と浜名湖は幅200mの今切で繋が
っています。

早起きすれば、まだ暗い海に向って舞阪港を出漁するシロコ船
(しらす漁船)の航海灯が続き、エンジン音を響かせて出漁する
様子を見ることができます。



乗せていただいた第三冨士丸が今切を目指します。その船尾か
ら振り返れば舞阪港の背は昇る朝陽に染まっています。
そこからあの暁の船団が前にも後ろにも続き、第三冨士丸もそ
の船団の中にいるのです。



船団は今切内の白灯台から南へ舳先を向けます。
後ろの景色が弁天島、いよいよ狭い今切に入ります。
大きな海と浜名湖が結ばれる潮の急流の今切を行くのです。



網船(あみぶね)第三冨士丸、綱船(つなぶね)第一冨士丸が
今切の南端、赤灯台を越えました。
遠州灘へ出た僚船たちと漁場へ向ってエンジンを唸らせてゆく。

いよいよ舞阪のシロコ漁(生しらす)の海へ出発します。

※取材協力:冨士丸



 

舞阪港しらす漁 冨士丸は東へ

カテゴリー │舞阪港しらす漁 冨士丸



午前五時に舞阪港を出港した「暁の船団」こと、シロコ(しらす)漁
船は今切を過ぎ、予定する漁場へと遠州灘を急ぎます。

遠州灘の海を行くシロコ船をご覧になったことがあるでしょうか。
以外なほど岸近くを行く船は網を巻いた網船(あみぶね)と綱(つ
な)を曳く綱船(つなぶね)が組となって行きます。

舞阪は広域合併で浜松市西区となり、しらす漁は浜松を代表する
漁業、海から浜松駅隣に立つアクトシティのタワーが見えています。
5月には凧揚げ合戦が行われる中田島前の海を僚船と共に東に
向います。



中田島を過ぎ馬込川の河口に至ります。
このあたりは海浜浸食を食い止める工事が常に行われているとこ
ろ、馬込川の河口では投網を楽しむ人が見えています。



東に向う暁の船団は抜きつ抜かれつつ、魚探で状況を見ながら進
みます。富士山が雲の波の上に顔を出し、時に先行する船が真っ赤
に染まる朝陽に輝きます。
舞阪港のシロコ船の漁場は東は御前崎あたりまで、西は愛知県境に
及びます。



ここは磐田市竜洋の海、この日第一回の網を降ろす僚船がターンし
ます。
竜洋の海岸、駒場の灯台あたりには大きな風力発電のプロペラが林
立しています。

いよいよこの日最初の網入れとなります。

※取材協力:冨士丸



 

舞阪港しらす漁 網船と綱船

カテゴリー │舞阪港しらす漁 冨士丸



舞阪の活性をあげるのは、生しらすの水揚げ、シロコ漁と呼ばれ
る漁は一枚の袋網を二艘で曳く二艘曳きで行われています。

この日最初の漁場に着いた冨士丸の堀江船長は漁探で水深12
mあたりに群れるしらすを見つけ、網入れを告げます。

網船(あみぶね)は船尾に120mもの長さの網を巻いています。
これを船尾から流しはじめます。



長い網の先には赤いブイがつき、船が網を曳く長さを知らせてい
ます。シロコ船が網曳く後ろ彼方には赤いブイが浮き、その間を
他船が横切ることがないよう知らせています。



網船(あみぶね)が網を出すと、綱船(つなぶね)が真横まで近づあ
いてきます。初めて見ると驚くほどの角度で綱船が迫り驚くほど、
綱船(つなぶね)は網船(あみぶね)に網の片側の綱(つな)を渡し
ます。



綱(つな)を受け取った綱船(つなぶね)は綱を曳きながら離れてい
きます。二艘の船は長い袋網を曳きながらスローで海を行く。
船長は魚探で群れを追いながら海を行くのです。

※取材協力:冨士丸



 

舞阪港しらす漁 船上の男たち

カテゴリー │舞阪港しらす漁 冨士丸



舞阪を早朝5時に出漁したシロコ船(しらす漁船)は遠州灘を行く。
冨士丸に乗せていただき、この日最初の網は磐田市竜洋沖に流
していきます。

舞阪のシロコ漁は二艘曳き、乗せていただいた第三冨士丸は巻
いた網を降ろす網船(あみぶね)です。
網を曳く片側の綱(つな)を堀江利明船長のお父さん、船主の堀江
さんが第一冨士丸で曳いています。
綱船(つなぶね)第一冨士丸には船長の弟さんが綱を受けています。

網船(あみぶね)の船尾では網を出して空となった巻車の後ろでマ
サユキさんが曳き綱(つな)を確認しています。



網を投入する、網を曳く方向、揚げるタイミングは網船の利明船長
が指揮をとります。キャビンに備えた高性能の魚群探知機にシロコ
の群れが映ります。
底の群れ、少し浮いた中層の群れなどに向けて網を調整し船を進め
ます。



船首側甲板では、乗り子のミキサ、ヒロ、ミチアキさんらが準備を始
めます。
冨士丸の伝統は徹底的な清潔さで漁をすること、洗ってある道具を
さらにまた塩水で清め、徹底的にキレイにしていきます。
後に報告しますが、舐めてもよいほどきれいな甲板が保ち続けられ
ていきます。



隣で綱を曳く第一冨士丸と、乗船した第三冨士丸は遠州灘をスロー
で進みます。
キャビンで慎重に操舵する船長の指示を待ち、網揚げがはじまります。

※取材協力:冨士丸



 

舞阪港しらす漁 曳き綱を受け取る

カテゴリー │舞阪港しらす漁 冨士丸



舞阪港の活気をあげる生しらす漁はシロコ漁と呼ばれています。
船はシロコ船、一枚の袋網を二艘で曳く二艘曳きで行われてい
ます。

船長が無線で綱船(つなぶね)に連絡します「揚げるぞ」。
綱(つな)を曳いていた綱船が網船(あみぶね)に近づいてきま
す。
網を巻いて揚げるのは網船(あみぶね)、綱船(つなぶね)は曳
いていた綱を網船に返すのです。



両船はキャビンの後ろから綱を曳いています。綱船(つなぶね)
は重い曳き綱を外して直接渡すわけではなく、綱(つな)につけた
枝の細い綱を網船に放ります。



網船(あみぶね)が受け取り、網を巻く巻車につなげると、綱船
(つなぶね)はキャビンの後ろにつけた太い綱を外します。
綱をロックする金物が外れる「バシュッ」という音がして主綱は
はずれ、回収した網船(あみぶね)は巻車に取り付けます。



キャビンの後ろの巻車が回転しはじめ、海底まで這っていた綱
(つな)が巻き上げられていきます。
乗り子たちは両舷で綱(つな)を巻きながら回収していきます。
一度目の網(あみ)が揚がってきます。

※取材協力:冨士丸




 

舞阪港しらす漁 袋網を巻き上げる

カテゴリー │舞阪港しらす漁 冨士丸



舞阪港から遠州灘広く出漁するシロコ船団(しらす漁船)の冨士
丸に乗せていただき、生しらすを獲る現場にいます。

いよいよ袋網の巻き上げ、通常の網とは違い、大きな口から先
に行くほど細くなり、袋の底に生しらすが溜まる袋網は100m以
上の長さを持っています。

船尾の巻車(まきしゃ)にまずは海底まで網の口を降ろす太いチ
ェーン(沈=ちん と呼ぶそうです)が巻かれていきます。



四人の乗り子(舞阪のシロコ船の漁師さんは乗り子と呼ばれる)
と息を合わせるのは堀江利明船長、キャビンの後ろで巻車をコン
トロールします。



チェーンに続いて粗い網があがってきます。
二連になった巻車にバランスよく巻いていきます。海の香りが船
上を満たし始めます。



遠州灘に浮かぶシロコ船、冨士丸。
巻き上げられた網は袋網に達します。
網というより布というほど目が詰った袋網の先端に遠州灘のご馳
走、生しらすが入っています。

※取材協力:冨士丸



 

舞阪港しらす漁 袋網を絞る

カテゴリー │舞阪港しらす漁 冨士丸



舞阪港から出漁したシロコ船(しらす漁船)冨士丸(堀江利明船長)
はこの日最初の網を巻き上げます。

巻車(まきしゃ)で巻く網は先端の袋網部分は手で揚げる重労働が
はじまります。
船尾でヒロさん、ミチアキさんが袋をはたきながら途中にかかった
生しらすを袋の先端に送っていきます。



100m以上もの長さを持つ網の先端が現れます、送られたしらすで
膨らむ先端が見えれば、いよいよ水揚げの開始となります。



網の先端を海に浸けたまま、船尾から左舷(船の進行方向へ左側)
に向って網を運びます。
船の左舷には網を揚げ易いように切れこみがあります。



一人が体を乗り出して網を絞ります。揺れる船の上で上半身を海に
出しての作業がはじまります。



たっぷりと海水を含んだ網は重く、何度か分に分けて絞ります。
手前は体を乗り出すミキサ、ベテラン漁師さんのミキサは七十代だと
聞きました。海の男は揺れる船の上で腹ばいとなり体を乗り出してシ
ロコ網を絞ります。

※取材協力:冨士丸



 

舞阪港しらす漁 袋網を絞る

カテゴリー │舞阪港しらす漁 冨士丸



舞阪港に活気をもたらす漁は全国に有名な舞阪のシロコ漁(生
しらす)、シロコ船冨士丸はこの日一回目の網を揚げています。

左舷の取り込み口から二人で数十キロもある網を取り込みます。



氷を入れた大樽に袋網をあけます。
この氷は水揚げした生しらすを絞めるもの、「氷を入れておくと
一瞬で絞まるんだ」と堀江船長に教えていただきました。



樽を満たしたシロコに手を突込みかき混ぜるのはマサユキさん、
入れた氷をまんべんなくまわしてシロコを絞めていきます。
暖かくなったとはいえ、氷と海水で手が切れるほどの冷たさです。



一回目の網には多くのコウナゴが混じっていました。
キラキラ光るコウナゴはおいしいものですが、シロコ漁では不純物、
このあと、船上ではコウナゴを分別する作業がはじまります。

※取材協力:冨士丸