浜名湖・舞阪 美しい海の仲間たち シャコ カナガシラ

カテゴリー │お魚エッセイ



ゴウゴウと海が唸りをあげて台風の波を遠州灘の岸にぶつけ、降り出した雨はやがて来る暴風と共にひと暴れしようとしています。

夜の間に抜けてしまえば明日の朝は台風一過、遅くなれば、台風の風と雨の中、私たちは怖いような少しワクワクするような気持ちで外に出る。
台風は全てをかき混ぜ、新しい日を連れてきます。

海辺の町は台風が吹き荒らした海に新しい魚の群れがやってくることを楽しみに、この台風を迎えるのです。
台風を待ち受ける夜、海の仲間たちの美しさを紹介いたしましょう。

海のカマキリのような姿をしたシャコです。寿司種としてつかわれるシャコはまるでカマキリのようなカマを持っています。

活きているものを持つ場合にはこのカマに気をつけなければ、するどいカミソリのような傷を負うことになります。
エビのように見えるシャコですが、こうしてみればまるでカマキリなのだとわかるのです。



古くは武士に好まれたというホウボウの類はまるで鎧武者のような姿をしています。
これは小型のカナガシラの仲間でしょうか、頭を多う鎧は鱗とは違う美しさを持っています。
魚たちは美しい緑の目に金環をかぶせ、カナガシラはまるで絞りを施した緋色の鎧を身に纏っています。

台風一過、長くお休みした海の漁の再開待ち遠しい南浜名湖の舞阪港・新居港、新しい夏の群れが台風後に寄せてきますようにと祈るのです。

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夏の舞阪港では新聞紙が重宝なこと

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南浜名湖は海の産地、遠州灘の幸が水揚げされる夏の舞阪港・新居港、海につながる浜名湖の幸を水揚げする雄踏(ゆうとう)・鷲津港に参りますと、仲買さんの仮置き場には古新聞紙が置いてあります。

読んだ新聞を置きっぱなしにしているんだなと思うことなかれ、港に置かれた新聞紙には使い途があるのです。

今日の舞阪港は久しぶりのカツオの水揚げで活気があがりましたが、仲買さんそれぞれに買い付けたカツオを海水で濡らした新聞紙で巻いています。漁師さんがぶ厚いスポンジのベッドで運ぶ舞阪(新居)のモチガツオは美しいもの、その美しさ損なうことなく運ぶには、濡れ新聞紙で丁寧に巻いて運ぶのです。

浜名湖の市場雄踏港の夏はサイマキ(クルマエビ)やボソ(ヨシエビ)の季節、競りの直前まで生簀に入れられていたエビたちは、ピンピン跳ねて籠から飛び出すほどの活きのよさ、これも買い付けたものを濡れ新聞紙の間にはさみ、飛び出さないよう、乾かないように運ぶのです。

市場は活きのよいまま運び出すところ、「ちょっと新聞を濡らしてきて」という声あがり、美しいカツオは新聞紙の簀巻きとなってゆく。
市場にある古新聞紙はこうして活用されているのです。

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鼻の下が長いのね キビレカワハギ ウマズラハギ

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南浜名湖は海の産地、舞阪港に揚る魚を漁師さん・仲買さんにご協力いただき紹介していますが、その中に好みの魚があります。
美しい色ならばアマダイ、魚というよりは砲弾ともいえるカツオなどと並べる中にカワハギ類、カワハギ顔の魚に惹かれるのです。

舞阪のお惣菜魚であるマトウダイなどを含めるその顔は目から口が離れてまるで鼻の下の長い顔が特徴、ちょっと間の抜けた顔ではありますが、そこがまた魅力なんですと、この手の魚に目がないのです。

キビレカワハギです。
ザラザラとしたサメ肌のカワハギを料理する場合、まずは皮をはいでしまうことから「カワハギ」と知ればその仲間もまた同じであること、鼻の下の長い顔にオチョボ口、アンテナのようにピンと立てたヒレも魅力となります。



ウマズラハギです。
カワハギの仲間には目から鼻の下が長いのねの特徴をしながらも、さまざまな形をしている魚があること、キビレカワハギはその名のとおりヒレが黄色く、ウマズラハギはそのヒレが緑に光ります。
そしてその鼻の下が長い特徴を「ウマズラ」などと名付けられている。

白身美しいカワハギ類の魚は刺身となりますが、この手の顔をした魚をみれば誰もがその肝の大きさを想像します。
刺身に添えられた大きな肝を醤油に溶いて楽しむのがカワハギ類の楽しみ方、鼻の下が長かろうと肝の太さ(大きさ)が優先するのです。

肝を計られる魚があり、肝を想像する私たちがいる。
私たちは肝を計られたら、ちょっと困ってしまいますが、魚たちはその肝を披露してくれるのです。
そんなことも鼻の下が長~い魚たちの魅力なのです。

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復活 弁天島の磯あそび 赤鳥居の瀬で遊ぼう

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磯遊びと聞けば子供も、昔の子供も心ときめく夏の海の遊びです。磯や引き潮に残された潮だまりで海の生き物を探し遊ぶこと、この楽しみが弁天島で楽しめることをご存じでしょうか。

二年前までJR弁天島駅前、弁天島海浜公園の桟橋は潮干狩りの渡船が盛んに行き来し、赤鳥居の瀬で潮干狩りを楽しんでいましたが、昨年のアサリ激減から昨年は中止、今年はGW限定で7日のみ開催されましたが、その後同じ瀬に渡って遊ぶ「磯遊び」が行われています。

弁天島の前の瀬は「いかり瀬」という大きな瀬、引き潮時には潮が大きく引いて広い瀬が現われます。
また引ききらない浅い水の中は海の生き物たちを探せる広い遊び場が顔を出しています。



磯遊びも潮干狩りと同じ、干潮時間の二時間ほど前から現われた瀬に渡ります。干潮時間からしばらくして6終了となります。
その間、弁天島の瀬で海の生き物と遊んだり、アサリを採る(300gまで)ことができます。
※毎日の潮の干満時間をお確かめの上、お出掛けください。

写真のような大きなアカニシの殻に入った大ヤドカリも拾えたり、カニなども見つけることができるでしょう。

開催日は6月24日(火)~30日(月)、7月1日(火)から3日(木)、7月9日(水)~17日(木)、7月19日(土)20日(日)、7月23日(水)~31日(木)、8月1日(金)~3日(日)、8月7日(木)~18日(日)、8月22日(金)~31日(木)となっています。

渡船料金は大人1,000円(中学生以上)・子供500円(4歳以上小学校まで)となっています。
お問い合わせは弁天島遊船組合 053-592-0933へお願いします。




 

舞阪伝え聞き話 舞阪はタチウオの大産地

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南浜名湖は海の産地、舞阪港は現在の場所になる前、しらす競り場の向かい側辺り、今の浜名漁協購買部のある一角にありました。
その当時の港の賑わいのお話、港で魚屋人生五十二年、大ベテランの丸小水産のばあばと漁協の職員さんが懐かしい話をしています。
ちょっと聞き耳を立ててみましょう。

数十年前、港が昔の場所にあった頃に舞阪はタチウオの一大水揚げ港でありました。

「今は遅くても3時(15時)頃に水揚げは終わっちゃうけど、昔は夜中までかかったものだよ」ばあばが話すのはタチウオの水揚げの頃、夏前のこの時期の話です。
「昔の港は狭くてね、タチウオがひと船でトン単位で水揚げされるから、とにかく運び出さないと次の船が降ろせないんだよ」

「とにかく運べ運べで体力が続く限り運んでいた覚えがあるよ」、職員さんがいいます。
当時は魚屋さんも4トントラックを数台持ち、運び専門に走らせていたといいます。

「タチウオの水揚げが終わり、運び出して仕事を終える頃には真夜中だったものさ」、当時の賑わいがわかります。



「運ぶ途中で伝票を書いていると、漁師さんからおんしゃ!何をさぼっているだ!」と怒られ、とにかく運ぶ専門になっていたよ

帰るのは真夜中、服はビショビショ、その服もタチウオで切れちゃうし(タチウオの牙は鋭いのです)、とにかく魚くさくて困ったもんだったよ。
昔話に職員さんも笑います。

どこの港も産地もそうでしょう。舞阪港の伝え話は多く、わずか20数年前の話を聞いても当時の賑わいを知ることができます。

「今年はね、割と獲れているんだよ」という舞阪のタチウオ、買っていただくことで港はまた賑わいます。
舞阪港伝え話、またどこかで聞き耳を立ててみましょう。

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浜名湖のタコはまだかいな

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浜名湖の港のひとつ、雄踏(ゆうとう)港市場の朝の競り場に行く、朝7:20分頃からの競りに出かけ、浜名湖の幸を見る楽しみをもう2年続けています。海の魚を獲る舞阪とはまた違う気風の雄踏港は、村櫛市場と統合され雄踏や村櫛、庄和などの漁師さんが水揚げにやってきます。

「今日はタコはどうだい」、朝の市場にやってくるのは漁師さん、仲買さん、仕入れの料理屋さんばかりではありません。
舞阪港にファンがいるように、浜名湖の市場にやってきては仲買さんが落としたものを分けてもらおうとお魚好きがやってきます。
もう二年も通えば常連のうち、少しは役に立つのか、魚の水揚げを聞かれるのです。



海につながる浜名湖の夏はタコが獲れる季節です。浜名湖のタコは味が濃いといわれるのは、よい餌を食べて育つから、なんとクルマエビやカニを食べてタコたちは育ちます。

ご飯と味噌汁だけで出かけてくる私たちよりずっと美食なタコたちは、あの刺身で塩焼きでいただくクルマエビや、蒸したり茹でれば真っ赤になるワタリガニを捕まえては食べているのですから、味が濃いわけです。

タコをよく獲る漁師さんに聞けば、夏前にピンポン玉くらい(頭が)だったタコは、すぐに大きくなるといいます。
タコが育つ夏はエビやカニの季節、タコたちは人が食べたいご馳走をたらふく食べながら育っていきます。



舞阪や弁天島の海岸を歩いていると、タコ釣りを楽しむ人に出会います。
岸沿いで頭を先にしてスイーッと泳ぐタコを見ることがあります。

糸の先にテンヤというルアーをつけて釣りますが、ハリがついたテンヤにカニをつけたりする。浜名湖のタコたちは美食ですから、それなりのエサが必要なのかもしれません。

「タコはどうだい」と聞かれればお得意な漁師さんの漁果を見ては「今日は少ないそうだね」という。
朝早く起きて市場にやってくる浜名湖のタコ好きは、タコを手にいれて食べようとやってきます。
そして競り落とした仲買さんにに分けておくれと折衝をして、袋に入ったタコを持ちホクホク顔で「買えたゾ」という。

味が濃い浜名湖のタコを食べれば、クルマエビやワタリガニを食べたことになる。
味が濃いタコを食べ、そうは買えないエビやカニよりうまいのだと溜飲を下げるのです。

雄踏港市場のお魚さん
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舞阪港カツオの市場 カツオの漁師さん

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南浜名湖のお魚を知りたいと、多くの漁師さん仲買さん、しらす加工業のみなさん、漁協のみなさん、料理人さん魚屋さんなど多くと知り合い、師を得て書き尽くせないその魅力を伝えてみたいと努力を続けています。

その中で最も興味深いのが漁師さんの仕事、魚は漁師さんが獲るもの、その現場は海の上、そこに何があるのかは魚の種類ほどのストーリーがあるのです。

舞阪や新居のカツオ漁は例年3月頃からはじまり初漁となり、初ガツオが水揚げされます。
締め方持ち帰り方からモチモチとした食感を愉しむモチガツオは初夏ともいえぬ季節からはじまる楽しみのひとつです。
今年は全国的な不漁から、この6月中旬となって2日目の漁で限定数が水揚げされました。

かつてその現場を知りたいと舞阪港の漁徳丸の英治船長、哲昌丸の和久田船長の船に同乗して黒潮まで行ったことがあります。
日が変ったばかり、0時から2時頃に出漁しひたすら南へ、50マイルほどの沖へ向う船は経済走行をして4時間ほどで黒潮に達します。
そして日の出と共に、船から曳き縄竿を両舷に伸ばし、先にバケと呼ばれる疑似餌をつけた多くの曳き縄を曳きはじめます。

まさに黒という色をした黒潮に真っ白な波を立て、船をカツオと同じスピードで走らせたまま、船尾に曳く縄の先にかかるカツオをひと縄づつ取り込んでいきます。そして一匹づつ締め、カンコウ(生簀=この場合氷と水で冷やして運ぶ庫)のぶ厚いスポンジの上にやさしく寝かせて品質を守りつつ漁を続けます。

舞阪港の競り時間は季節によって変りますが午後、カツオを獲る時間+帰路の時間を計算しながらの漁がカツオ漁です。
帰りは競り開始時間を目指し、僚船と共に舞阪を目指しスピードをあげて向うのです。
出漁から水揚げまで12時間以上の操業で獲られるカツオは、往路復路の燃料費とこの長時間の航行の上で水揚げされています。

多く獲れ、市場が高値であれば漁師さんは報われますが、少なければ採算を割る。カツオ漁は多くのリスクを持つ漁でもあります。
されどカツオは市場を沸かせる魅力を持ち、多くの漁師さんがカツオが一番面白いという漁本来の魅力を持つ漁種です。

モチガツオのうまさ、その貴重さはご存じのとおり、その味楽しむ中に往復で12時間以上もかかる漁をする漁師さんの話題を盛りつけて楽しんでいただきたいと思います。

漁徳丸黒潮のカツオ漁
舞阪港初ガツオ漁2013