徳さんの冴 旬菜一徳

カテゴリー │村櫛 旬菜一徳



もう何年になるだろう、包丁の冴みごとにお造りを作り、ひと
手間かけた料理を作ってくれる料理人に出会ったのは南浜名湖
村櫛の浜名湖ボートクラブカナルのパーティでした。

その名は「徳さん」、関西から浜松の料亭を修行してまわり、
村櫛に戻って「旬菜一徳」を開業してまもなく三年となります。

「徳さん久しぶり」と広間ではなくカウンターにとっていただ
いた席に止まります。

ズラリと包丁掛けに並ぶ包丁をとった徳さん「シメサバ大丈夫
だね」お造りが進みます。

このところ興味津々の包丁談義をしながら、「メヒカリ入って
いるよ」と南浜名湖の新人の好みと腹の減り具合を確かめてく
れるのです。



高い天井と和の造作が吹きぬけている下のカウンターはわずか
八席、ここで下調べ(村櫛の旬菜 一徳)した梅酒をいただき
ます。

うぐいす 鶯とろ」という梅酒、梅の実をおろしたほどとろ
りの口あたり、これをいただけば腹は目は親方の徳さんの手元
を楽しむこととなる。

ほど近いXIV浜名湖にお泊りの大人のカップルがお隣、二世帯で
棲む仲のよい親子の食事ダブルデートが右隣、互いに頼んだも
のを「おいしいよ」と薦めながら腹をさらに減らしていけば、
そこに「お待たせ」とトンとお造りの皿が届く。

徳さん、呑ませてもらいますよ。

「和風のつくりだけれど、高い天井の横から光を取り入れてい
るのよ」

どうやらお隣は設計関係のお仕事らしい。ならば、あの話を
仕掛けてみましょうか。

村櫛 旬菜一徳の夜ははじまったばかりです。


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徳さんの揚げ 旬菜一徳

カテゴリー │村櫛 旬菜一徳



南浜名湖村櫛は浜名湖ガーデンパークや開催されるイベント、
XIV浜名湖などへの宿泊や、とうとうみオープンの開催など
浜名湖の華やかさを楽しみに行くところです。

舞阪にうまいものあり、旬菜一徳の親方の徳さんとはもう10
年にもなる知りあい、カウンターの席に留ります。

「よいわかさぎが入ったんだよ」

お造りを楽しみながら次を誘ってくれるのもカウンターなら
ではの楽しさ、その言葉に八席三組の顔が上がり、私もこち
らもとオーダーの声があがるのです。

「暖かいうちに」と箸を急がせたくなる冬の風味魚、寒中に
来たならば寒中の肴とすべし。
カラリと揚げたわかさぎをいただけば、腹は湖水のようにな
り酒をスイスイと注いでゆくのです。

「一緒に用意してるよ」と徳さんが言うのはもちろんメヒカ
リ、小さいから丸干しなんだと予告をされたら、ワカサギを
たいらげ、やはりここは浜名湖、海の底深く棲む美味を待と
うとも思うのです。



メヒカリは本名は「アオメエソ」と言う。舞阪の、愛知県の
各港で獲れる最高の肴である。
小さくで目立たず、見栄えがしないことこの上ないが、遠州
灘の底に緑の目を光らせて群れて棲む。

こんな小さな魚を軽く干して焼きで揚げで食せば、それは最
高の肴であると舞阪の新人は誰にも薦めている。
多くは獲れず手間もかかるから、見つければすかさず、とい
う目ざとさも必要なのである。

写真など撮ろうとするから、徳さんに手間をかける。
皿をぐるりと回すうちに小さなメヒカリがひとつ転げた。

「こんなじゃどうだい」と徳さんの箸がもう一度積み上げを
してくれた。

「熱燗もらおうかな」、メヒカリは酒を加速させる肴である。
「徳さん、一合でいいよ。呑み過ぎちゃうからね。」

旬菜一徳で熱燗が来るのを待つ、箸はメヒカリをつつこうか
と迷っている。



 

徳さんの燗 旬菜一徳

カテゴリー │村櫛 旬菜一徳



南浜名湖村櫛(むらくし)は南浜名湖の奥座敷、XIV浜名湖
などもあり、大切なお客様を通す客間でもあります。

その村櫛でまもなく三年、長く修行を積んだ料理人徳さん
が腕の冴えとひと手間かけた料理を出すのが「旬菜一徳
です。

予約で座れる八席のカウンターでお造りに揚げ物に舌鼓を
打てば腹がぐっと決まり、さてここからは落ち着いて熱燗
をいただこうなとど考えるのが冬の夜なのです。

「徳さん熱燗をね、酔うといけないから一合ね」(アイヨ)

さて酒呑みはこの燗の時間が待ちきれませんが、徳さんは
村櫛の湯に入れて出してくれました。
湯を張った湯船の下に固形燃料にも似た蝋燭を燃した一徳
五右衛門の湯の登場です。

「うれしいねえ」と酒呑みはこんなことがやたらとうれし
いものであります。燗を冷えさせないという心遣いです。



「いい湯だな」、酔客はこんないたずらをしては隣あった
お客さんと楽しんでいる。

千代紙の箸置を粋におつむりに乗せましていい湯だな。

南浜名湖村櫛にあります旬菜一徳の湯、さて湯あがりには
冷酒といきますか。

徳さん、揃ってるねぇ、村櫛で沈没しても舞阪はすぐそこ。
湯にも入ってさっぱりと、この後で飯も食うからね。

徳さん笑い、隣のご縁のカウンター仲間も笑う夜は更けて
ゆくのです。



 

徳さんの飯 旬菜一徳

カテゴリー │村櫛 旬菜一徳



南浜名湖は朝が早い町、早暁から働く漁師さんがあがるの
は午後、お店もそれに合わせて早めに開店するのです。

それでも南浜名湖に旅すれば「大人の夜を過ごす」お店が
欲しいもの、南浜名湖の奥座敷村櫛の「旬菜一徳」の予約
カウンターで酒を重ねる夜を楽しむのです。

「玉子焼きが食べたいね」

一合の熱燗を楽しむなら上手に楽しみたい、酒の後に飯を
いただこうというつもり、みんな大好きながら特に男の子
は母の味そのものの玉子焼きを好むのです。

「違うねえ」と玉子焼きをほおばりながら言うのはオリジ
ナルの母の玉子焼きとの違いが修行の深さを褒める言葉、
徳さんの玉子焼きは食べるほどに腹がすくのです。

いじきたないままに食べ続けたくなる隠し味が含まれてい
るのです。



「はいお待たせ」と丼がやってきます。

さきほどから先に出た隣の鰻がうらやましいのも玉子焼き
の後ひきのせい、「おいしいわぁ」と鰻の湯気が香るのです。

じつは浜名湖の名物丼として工夫された「牡蠣蒲丼(かき
かばどん)」は初めて、一徳で実現しようと選んだのです。

お造りで魚を覚え、その味を知り楽しみ、素材そのものの
揚げで酒を進ませ、玉子の喜びを思い出して腹の準備を整
えて、最後に濃い味で腹をつくる。

徳さん、上手に食わせて呑ませたでしょう。

「ありがとうね、また来てくださいよ」

徳さんと出会って10年、浜名湖ボートクラブカナルの芝の
上、そのガーデンパーティでその冴を写真に収めていた。

「ごちそうさま徳さん、いいお店だね」

舞阪弁天島と村櫛は浜名湖を渡る橋の向こうとこっち。
通うのにどれほどもない距離なのです。