大太鼓に残す今年の飛沫

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大太鼓に残す今年の飛沫

舞阪大太鼓祭りこと岐佐神社祭典から二週間、今年は最後まで
着いてゆくことができ、その話を書いている。
古き伝統を継いできた祭りを、二年目で知るなど無理なこと、それ
でもこの祭りの心を少しづつ理解しつつあります。

大太鼓は見上げるほどの大きさ、岐佐神社の三連の石鳥居を通
すことから太鼓を載せる太鼓台を含め八尺余りの大きさを持つ。
太鼓台ごと石段を上げ、また降ろすところは見ものの一つである。

舞阪の太鼓を打つ(ぶつ)のはタイコブチと呼ばれるバットほども
ある大きな撥、子供たちは成長につれて大きなものをこしらえて
もらって祭りに臨む。

この撥をこしらえるのは船大工さんだと聞いていますが、祭り前に
大工さんが削り丁寧にペーパーがけをしてこしらえているのを見せ
ていただいた。

「孫がもっと長いものが欲しいというものでね」

元大工のお爺さんは孫のためにシュッシュッツと紙やすりをかけ
ていた。

大太鼓に臨む若者たちは指に晒しを巻いている。
大太鼓は腕力で叩くものではなく、体ごと大太鼓にぶつかってゆく
ように叩く。長いタイコブチを持つ手は震える太鼓の皮にぶつかり、
切れてしまう。

それを防ぐための晒でも足りずに指から血飛沫があがる。
それも太鼓男たちの心意気、次第に膨れ上がる指の付け根から
飛沫いた血が太鼓を染めてゆく。

「むしろ皮が破れて血が出てしまったほうが楽なんだ」

内出血するより血は出してしまったほうがいい、そのためにまた
体ごとぶつかってゆく。

大太鼓は鳴りはじめも鳴り納めも厳しく時間が決められている。
使いという伝令を年番町から受けて「秒」単位で叩かれている。
終了の潔さも舞阪衆の伝統である。

耳に炸裂音のような舞阪の血のリズムが残ったまま、本祭り終了
後の真っ暗な舞阪を歩く、いつまでもいつまでもそのリズムが聞
えるようで振り向きながら歩いてゆく。



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