冬の夜明けは遅くまだ真っ暗な早暁6時の舞阪を出て奥浜名湖で
牡蠣を水揚げしながら夜明けを迎えた「
カネ幸堀内商店」のみなさ
んが北雁木に戻ってきます。
東海道三十番目の宿「舞阪」で道は海に突き当たり、海上一里を
新居へ渡す渡し場を「雁木(がんぎ)」といいます。
舞阪衆は三カ所あった雁木のうち、大名用であった北雁木を今も
残し「きたがんげ」と呼んで親しんでいます。
牡蠣を満載した荷船は分離されて北雁木に舳先を着け、山のよう
な牡蠣の水揚げがはじまります。
ここで舳先を着けるのがミソなのです。
着いた船には奥浜名湖からの復路でほぐされた牡蠣が山となって
います。堀内さんはスコップで牡蠣をすくって渡します。
ステンレスの網でできた丈夫なタモに入った牡蠣を一度「ボチャン」
と海に落として洗います。
牡蠣についた余分な汚れ、海の生き物たちがこれで海にかえします。
海の生き物は浜名湖を育てるなんらかの役をしているのです。
荷船の上には鷺や小さなユリカモメたちがやってきます。
いつの間にか乗り込んでほぐされた牡蠣の間に落ちた小さな生き物た
ちをついばんでいます。
海の幸を分かつ漁師さんは追うこともなく鳥たちはおいしい「えんばい」
にありつくのです。
※えんばい=漁師さんが魚などをふるまうこと、自家で食べる分のこと
※取材協力:カネ幸堀内商店のみなさん 053-592-1955