舞阪沖8.5マイルの150~200メートルの中深海で450メートルもの
三枚刺し網を曳く手長エビ・甘鯛漁はついに終了する。
超早朝2時に舞阪港を出港し、この時8:30、我々が常に仕事を
はじめる時間に
漁徳丸のエージ船長の沖での仕事が終わるのです。
水揚げは低調なのだそうだけれどバケツに分けられた手長エビと
甘鯛は船首に運ばれて氷漬けにされる。
ズッシリとしたバケツを引きずるようにして行く。
さあ帰ろう!
車と同様GPSで舞阪港を目指す船は自動操舵で進む。
無論見張りをしながら沖から母港を目指すのです。
途中、船尾の網巻き機に巻かれた刺し網をまたほどき、船の着場
についてからの作業の準備をする船長、この網は帰港後、奥さん
と二人で小魚やヒトデなどをはずしながら陸にあげる。
そして明日のためにまた船尾にきれいにたたみながら戻すのです。
一度見ただけでも重労働な沖での作業が明日も続く、仕事という
ものは明日の安全操業ができるよう準備するまでが仕事である。
気づけば船長がコンビニ袋に氷を入れて渡してくれた。
どうやら写真を撮りながら見ているだけなのに、顔がボオッとし
ていたらしい。
夏の朝とはいえ、船の上は上から海からの照り返しで相当の暑さ
となる。「暑さでまいった顔をしていたよ」と船長が笑う。
同じ7時時間でも帰港すれば終わる素人は陸(おか)を見てうれ
しいと思う。
船長はこの後、魚を市場にあげ、着場に船を戻して網の整理を
して明日に備える。
さらに市場のセリに参加もする。
南浜名湖が近づいてくる。午前中でほとんどの漁師は仕事を終え
ると聞けば素人はうらやましいとも思いがちとなる。
けれども漁師という仕事の厳しさを知れば明日への準備までを
一連の仕事とし、それが安全までを考えたものと認識する。
文字どおり漁とは水ものである。
同じように網を曳いても必ずしも成果があがらぬ時もある。
汗びっしょりのエージ船長はそれでも涼しい顔をして船を進める。
タフな男の横顔を見ながら、ヤワな男は氷でうなじを冷やしていた。