「アマダイはどう料理するとおいしいんですか」
舞阪港の午後、おいしそうなお皿サイズのアマダイを競り落とした
魚屋さんの前に座って話しを聞けば、口を開いていただけた。
「昔はな
家が今のとおり魚屋で、兄弟がズラリといてな、ところが魚が好き
なのはオヤジとオレだけなんだ。」
そこで飯の時間となれば二人で魚を焼く、家は忙しいから自分で
焼くんだ。今のようにガスじゃないよ、七輪を持ち出して焼きはじめ
るんだ。
アマダイを、こう七輪に乗せて(大切に乗せる様子)、そう乗せるだ
けで塩なんか使わないんだ。面倒だからね、そんなことしなくても
うまいんだ。
アマダイはな、焼いても皮が残ってな、それで焼いてるとオヤジが
顔を出して飯にしようと言う、二人で飯碗を持って焼けるのを待っ
ている。
あまりいい匂いがするから二人で我慢できなくて箸を出す。
オヤジが箸を出すと「まだ焼けてないよ」とオレは言う。
オレが箸を出すと、オヤジがまだだととめる、そんなこと繰り返して
アマダイが焼ければ、二人だけのご馳走飯となるんだ。
たっぷりの飯に焼けたのアマダイ、皮をべろりとむいてな、身をこう
ホクッとな、これがうまいんだ。塩もなしでだぜ。
アマダイはここ舞阪の人は好物でも、浜松の人なんかはまるで知ら
ないんだ、居酒屋や料理屋に行けばそれなりの値段の高級魚とな
るからね。普段は見たこともない、料理することもないからね。
食べてもらいたいねえ それも七輪で焼いてさ。
あれはうまいんだ。
腹へってきたねえ。