舞阪沖遠い南の海、黒潮の上に八本の縄を曳く漁徳丸の船尾で
早暁の黒潮のカツオ祭りがはじまります。
カツオ船はイワシなどを追いつめたなぶら(海が小魚などで湧きか
えること)に群れる鳥がつくるトリヤマを探しますが、この日は鳥が
全く見えません。
エージ船長は「底当たり」と呼ぶ、勘と運にまかせて船を走らせて
いきます。
04:50分、まだまだ青白んだ海に曳く縄にカツオは食い、青白い
炸裂をはじめます。
この日、最初の黒潮の子「カツオ」が釣りあがります。
舞阪のカツオは釣れてエージ船長の腕に抱かれた瞬間に締めら
れています。
余計に暴れさせず、即時に絞めることでその肉の鮮度を保ち、ひ
きしめる舞阪のモチガツオは船の上でその値打ちを決めています。
舞阪のモチガツオたちは、釣れてなお大切にされています。
船尾デッキ下のカンコウの中に氷が敷かれ、カツオが並べるぶ厚
いスポンジが広げられています。
その黒潮のベッドは、やさしく並べられて傷がつくこともなく、また
あのカツオの特徴、美しい縞模様を保って舞阪港に戻るのです。
まだ朝ははじまったばかり、このベッドは何段もの寝床となってカ
ツオたちが詰ってゆくのです。
※取材協力:漁徳丸