病棟の長々し夜は名人落語でひとりかもねむ
生まれて初めての3ヵ月に及ぶ入院と静養を過ごせば見過ごしてしまっていることに感謝できるようになる。
お医者さん、看護師のみなさん、ヘルパーさんやさまざまなスタッフへのみなさんへ迷惑をかけぬよう消灯後は眠るまでプライバシーカーテンの中で静かに過ごすことが大切です。
有料のテレビカードを用いてベッド横に設備された小型テレビを見ることもできますが、できれば聴くメディアがよい。
普段から眠る前まで枕元に積んだ「落語全集」などを楽しんでいますから、これはよいチャンスと名人ものを聴くことにしました。
うれしいことに名人の志ん生(しんしょう)などの貴重な高座の様子はネット上にズラリと並び選ぶことができます。
本としての落語が面白いのに名人の高座はたまらない、それもテレビなどでの出演ものではないからフルサイズの長さでじっくり聴かせてもらえます。(噺家とは与えられた時間の中でどのようにも噺ができるものを呼ぶ))
どの話も古典ですし聴いたことがある話でも噺家によってその表現は違い、枕からじっくり楽しめること、これは時間がたっぷりなければ楽しめません、昼間たっぷり体や傷を休め、まだ眠るには早い病棟の夜はまさに落語を楽しみながら学ぶことができるのです。
前にお話ししたように同室の先輩は84歳と83歳の父のような歳、「じつは落語を聴いていまして」と言えば「好きだ」と言う。
ネットにあるものをスマホでイヤホンで聴いていますから、名人の落語を昼間楽しんでいただいた。
イヤホンをしたまま、ポロポロと涙をこぼして聴く名人の人情噺、楽しんだあとは「久しぶりに聴いたけどいいねぇ」などと盛り上がり、リクエストを聞いては探す。
病棟の長々し夜は名人落語でひとりかもねむ。
名人はいやともいわず何度も何度も口演してくれるのでありました。
※コロナ禍の中も懸命に働くHEALTH FIGHTERのみなさんに拍手と応援の気持ちを贈ります。
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